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長崎家庭裁判所 昭和31年(家イ)175号 命令 1956年9月28日

申立人 鶴田マス(仮名)

相手方 鶴田菊造(仮名)

主文

相手方は、その居住家屋である

長崎市○町○○番地

家屋番地同町○○番

木造瓦葺平家建住家(建坪十七坪)

の売却代金より、その家屋に対する抵当権設定の債務を控除した残金を遅滞なく長崎市○○町に在る長崎○○郵便局の通常郵便貯金に預金して本件調停終了迄之を保管すべし。

相手方が正当な理由なくこの調停前の措置に従わないときは、家庭裁判所より金五千円以下の過料に処せられる。

(家事審判官 中島武雄)

参照

申立の趣旨

1 申立人と相手方とは離婚する。

2 当事者間の長男正雄、長女典子、二男行雄、四男孝明の親権者を母である申立人と定め、これが監護教育をなすこと。

3 相手方は申立人に対し、慰藉料及び財産分与として相当額を支払うこと。

事件の実情

(申立書及び口頭追加申立書の実情より)

申立人と相手方は昭和十九年四月○○日結婚(昭和十九年九月○○婚姻届出)して現在迄に四男一女(三男孝明は昭和三十年二月○○日死亡)を儲けた。

相手方は結婚当時海軍上等整備兵曹であつたが、昭和二十年八月○○日復員し、長崎市内にある○○高等学校の守衛となつた。昭和二十一年七月頃迄は普通の夫婦生活を営んできたが、同年八月頃より相手方は酒に耽り、其の上賭博をやる等して金銭の浪費が多くなり家庭を顧みない様になつた。

そこで○○高等学校の校長より前記不行跡を改める約束で事務官に昇格してもらつたが、まもなく相手方は○高等学校の現金、三万円を使込み、其の為事務官の職を辞めたのである。

申立人は相手方が不行跡を改め様とせず擅に振舞うので、昭和二十九年十月頃相手方と別居したが、相手方が不行跡を悔いて懇願するし、子供の将来を考へ合せ、昭和三十年一月頃復縁した。

然し之も一時小康を保つた丈で現在も相手方は酒に耽溺し、申立人母子に暴行を為し、其の上約十五万円位の負債を作り経済的に行き詰つて現在では其の日の生活にも事欠く状態である。

相手方は○○高等学校の事務官を辞め、其の後○○保険会社の外交員や、工員等転々と職を変へて永続きせず現在は長崎市内にある○○鉄工所の臨時工員である。ところが相手方は申立人及び相手方が居住する相手方所有名義の木造瓦葺平家建一棟(建坪十七坪)を本日(九月二十八日)不動産売買仲介業村川一男の仲介で氏名不詳者に金十七万円で売却し、これで相手方が坂田花子より借用した金八万七千五百円(利子共)を返済することにしている模様であり、相手方は家屋売却代金より該坂田花子への返済金を差引いた残金も家族の生活費に供することなく自己が勝手に費消する虞れがあるので、相手方が右残金を費消しないように調停前の措置をしてもらいたい。

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